回復の兆しを見逃さない場所 岡山養護センター

兵庫県宝塚市に住む女性は、ゆっくりとした「まばたき」で夫に意思を伝えます。4年前、交通事故で意識不明の重体となり、病院に運ばれた彼女。夫は当時の出来事を振り返り、「なんで家族が交通事故に遭うことになったのか。不安だらけでした」と語ります。緊急手術を経ても、回復の見通しは立たず、3か月ごとに入退院を繰り返す日々が続きました。一般的な病院では治療やリハビリを受けられる期間が限られているため、ようやくたどり着いたのが、交通事故で重い障害が残った患者を専門に受け入れている岡山市の病院でした。

継続的な医療とリハビリ

岡山療護センターは、自動車事故対策機構が運営する病院で、自賠責保険の運用益などで運営されています。入院期間はおおむね3年間で、患者一人一人にあわせたメニューで回復を目指すことができます。病院のベッドは50床で、交通事故の衝撃で脳を損傷した患者を受け入れています。同じ看護師がひとりの患者を継続して受け持つ体制がとられており、リハビリでは患者の筋肉や関節のこわばりを取り除き、意思疎通のトレーニングも行われています。

意思疎通が生きがい

岡山療護センターでは、患者の五感を刺激するために窓の近くにベッドを置き、元気だった頃に好きだった音楽を流したり、テレビをつけたりしています。退院までに少しでも意思疎通ができるようになることを目指しており、この30年間に入院した503人のうち、36%が意思疎通の能力や運動機能が回復して退院し、障害者支援施設などに移ったとのことです。

家庭での治療と支援

岡山療護センターは、患者の回復を支える場所として、意思疎通の重要性を理解しています。患者の五感を刺激するために窓の近くにベッドを置き、元気だった頃に好きだった音楽を流したり、テレビをつけたりしています。退院までに少しでも意思疎通ができるようになることを目指しており、この30年間に入院した503人のうち、36%が意思疎通の能力や運動機能が回復して退院し、障害者支援施設などに移ったとのことです。

岡山療護センターの鎌田一郎副センター長は、「重い意識障害の患者は、声をかけても普通に会話はできないのですが、実際は、アイコンタクトができるとか、ちょっと手を動かして意思の疎通ができるとか、状態はさまざまです。やりとりができるようになるというのは、本人や家族にとって生きがいになるはずですが、かなりの時間が必要になります。そういう意味では、3年間、変わらぬ質と量の医療が提供できるというのは意義があると思います」と述べています。

このような療護センターの存在は、交通事故被害者の支援において重要であり、さらなる拡充が求められています。久仁子さんの夫のように、患者とその家族が希望を持ち、回復を喜びに歩んでいくことを願っています。