日本でも発生していた無呼吸症の医療器具による健康被害

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、睡眠中に気道が塞がれることで呼吸が停止する症状で、日本では約900万人がこの症状に悩んでいます。その治療に使われるのが、CPAP(シーパップ)装置です。米国フィリップス製のCPAP装置に関しては、健康被害の可能性があるとして2021年7月から自主回収が始まりました。しかし、日本での対応は米国とは異なり、情報の周知が不足している現状があります。本記事では、日本での健康被害の実態について詳しく解説します。

CPAP装置の健康被害の現状

日本において、フィリップス製CPAP装置の健康被害が報告されていないとされていますが、実際には被害が発生しています。医療安全対策を担うPMDA(医薬品医療機器総合機構)のデータによると、2021年度から2022年度にかけて、CPAP装置の防音材の劣化による健康被害が84件報告されています。このうち49件はすでに健康被害が確認されており、主な症状として「頭痛」「咳」「鼻炎」「喘息」などが挙げられています。

米国では、CPAP装置の使用により385件の死亡事例が報告されています。FDA(米国食品医薬品局)は、フィリップスに対して早急な対応を求める行政命令を出しており、患者への情報提供が徹底されています。一方、日本では患者が直接健康被害を報告する公的な窓口が存在せず、情報が十分に行き渡っていない現状があります。

日本と米国の対応の違い

米国では、CPAP装置の回収が最も危険度の高い「クラスⅠ」に分類されましたが、日本では「クラスⅡ」とされています。これにより、日本では深刻な健康被害の恐れがないとされています。しかし、実際には日本でも健康被害が発生しており、米国と同様の対応が求められます。

また、米国では医師だけでなく患者自身も有害事象を報告できるMDR(有害事象報告)制度が整備されており、10万5000件以上の報告が寄せられています。日本では、フィリップス・ジャパンが健康被害の実態について公表しておらず、患者にとっては情報が途絶えたままの状況が続いています。

患者団体と情報の周知

日本では、フィリップス製CPAP装置の健康被害に関する情報が十分に周知されていないため、患者団体の活動が重要となります。患者団体が中心となり、正確な情報を広めることで、患者が適切な対応を取ることが可能となります。また、医療機関や医師を始めとする医療従事者も、患者に対して積極的に情報提供を行うことが求められます。

さらに、患者が健康被害を報告するための公的な窓口を設置し、迅速に対応できる体制を整えることが必要です。これにより、患者が安心して治療を受けることができる環境が整備されるでしょう。

まとめ

日本でもフィリップス製CPAP装置による健康被害が発生していることが明らかとなりました。米国と同様の対応を日本でも行うことで、患者が安心して治療を受けることができる環境を整える必要があります。患者団体や医療従事者の協力を得て、正確な情報を広めることが求められます。また、患者が健康被害を報告できる公的な窓口の整備も重要です。