8月 2024

信頼できる医療の選択:薬剤師の役割と「Do処方」の問題

医療の世界では、医師の処方に疑問を抱くことがあるかもしれません。特に、「Do処方」と呼ばれる無駄な薬の継続処方や、ポリファーマシー(多剤併用)といった問題が発生しやすい状況では、薬剤師の役割が重要になってきます。本記事では、薬剤師の役割と、信頼すべき医療選択について考察します。

ポリファーマシーと「Do処方」の問題

ポリファーマシーとは?

ポリファーマシーとは、複数の薬を同時に使用することで起こる問題を指します。高齢者や慢性疾患を抱える患者においては、特にこの問題が顕著です。薬の相互作用や副作用が増えることで、健康リスクが高まるため、注意が必要です。

「Do処方」の闇

「Do処方」とは、特に効果が見込めないにもかかわらず、同じ薬を長期間処方し続けることを指します。この背景には、医師が忙しくて患者ごとの詳細な薬歴を確認しないことや、新しい治療法に対する知識不足があるとされています。このような状況では、患者の健康が損なわれるリスクがあります。

薬剤師の重要性

薬剤師の疑義照会

薬剤師は、医師が出した処方箋に対して疑義を感じた場合、その内容を確認・照会することができます。これは、患者の安全を守るための重要な役割です。しかし、医師の中にはこの疑義照会を面倒だと感じる人もいます。それでも、薬剤師がしっかりと確認を行うことで、不要な薬の処方や薬の相互作用による健康リスクを減らすことができます。

訪問薬剤師の利用

訪問薬剤師は、足腰が悪くて薬局に行くのが難しい人や、薬の服用に困難を抱える人に対して、自宅を訪問して薬剤管理を行う専門家です。彼らは処方箋をもとに、服用中の薬に重複や相互作用がないかをチェックし、整理します。また、訪問薬剤師は、患者の生活環境を把握し、適切な薬の管理と指導を行うことができます。

信頼できる医療選択

かかりつけ医の選び方

信頼できるかかりつけ医を選ぶことは、健康管理において非常に重要です。医師は、患者の全体的な健康状態を把握し、適切な治療を提供するための中心的な存在です。しかし、医師の中には忙しさから個々の患者に対するケアが不足することもあるため、薬剤師の意見を取り入れることも重要です。

薬剤師との連携

患者自身が、薬剤師と積極的にコミュニケーションを取ることも重要です。薬剤師は、薬に関する専門知識を持ち、適切な薬の使用をサポートします。薬の服用方法や副作用について疑問がある場合は、薬剤師に相談することで、より安全な薬の使用が可能となります。

まとめ

医療の選択においては、医師だけでなく薬剤師の役割も重要です。ポリファーマシーや「Do処方」といった問題を防ぐために、薬剤師の専門知識を活用し、信頼できる医療選択を行うことが求められます。訪問薬剤師の利用や薬剤師との連携を通じて、より良い健康管理を実現しましょう。

糖尿病治療薬メトホルミンでフレイル(虚弱)が非フレイルに

高齢者の健康維持は重要な課題であり、特にフレイル(虚弱)と呼ばれる状態は大きな関心事です。フレイルは、身体機能や認知機能の低下を伴い、生活の質を著しく低下させます。今回の研究では、糖尿病治療薬として知られるメトホルミンがフレイルの改善に寄与する可能性が示されました。

前糖尿病とフレイル発症の関係

前糖尿病の影響

前糖尿病は血糖値が正常範囲を超えるが糖尿病には至らない状態を指し、高齢者に多く見られます。この状態がフレイルのリスクを高めることが知られていますが、そのメカニズムについては明らかではありませんでした。

研究の概要

米・Albert Einstein College of Medicineとイタリア・University of Naples FedericoⅡの研究チームは、高血圧を有するプレフレイルの高齢者を対象に調査を行いました。前糖尿病状態の者は、1年後にフレイルを発症するリスクが有意に高いことが示されました。そして、メトホルミンの投与がフレイルの改善に効果的であることが分かりました【Hypertension(2024; 81: 1637-1643)】。

インスリン抵抗性と認知・身体機能障害の関係

インスリン抵抗性の指標

研究では、インスリン抵抗性の指標としてTyG指数(トリグリセライド値×空腹時血糖値/2)を用い、これと認知・身体機能障害との関連を解析しました。その結果、インスリン抵抗性が高いほど認知機能障害および身体機能障害が進行しやすいことが明らかになりました。

認知機能と身体機能の評価

具体的には、Montreal Cognitive Assessment(MoCA)スコアで評価した認知機能障害および5m歩行速度で評価した身体機能障害が、TyG指数と有意な相関を示しました。これにより、インスリン抵抗性がフレイルの進行に深く関与していることが示唆されました。

メトホルミンの効果

メトホルミン投与群と非投与群の比較

フレイルを発症した前糖尿病患者を対象に、メトホルミンを1日1回500mg投与する群と非投与群に分け、6カ月間追跡しました。結果、メトホルミン投与群では非フレイルの状態に改善した割合が有意に高かったことが確認されました。

メトホルミンの役割

メトホルミンは糖尿病治療薬として広く使われていますが、今回の研究でフレイル抑制にも効果があることが示唆されました。これにより、高齢者の健康管理における新たな治療法としての可能性が期待されます。

まとめ

今回の研究では、前糖尿病がフレイルのリスクを高める一方で、メトホルミンの投与がフレイルの改善に寄与することが示されました。メトホルミンは糖尿病治療薬としての役割を超え、高齢者のフレイル予防や改善に有効である可能性があります。今後の研究と臨床応用に期待が寄せられます。