富山大和漢医薬学総合研究所の研究グループは、生薬「肉じゅう蓉(よう)」に含まれる成分「アクテオサイド」に慢性期の脊髄損傷を改善させる作用があることを発見した。新たな治療薬の開発につながることが期待される。事故などで脊髄を損傷した後、時間がたって慢性期になると、まひや感覚障害の回復は難しい。神経機能学分野の東田千尋教授らは、骨格筋の萎縮を改善するだけでなく、断裂した神経細胞の突起「軸索」を回復させる成分の発見を目指して研究を進め、アクテオサイドに活性を見いだした。脊髄損傷のマウスの骨格筋にアクテオサイドを注射すると、運動機能が改善。筋の萎縮が回復し、脊髄の中の軸索の密度が増えることが分かった。アクテオサイドによって、タンパク質「ピルビン酸キナーゼM2」が骨格筋から分泌されることを発見し、このタンパク質が筋量を増やし、軸索を伸ばす作用を併せ持つことも明らかにした。15日に「Journal of Neurotrauma」で発表。
【解説】脊髄損傷に対する再生治療研究は30年ほど前から盛んに行われている。これまでの研究では、一度切れてしまった脊髄内の神経突起を再度伸長させるような方法や、神経突起を包む「髄鞘」と呼ばれる鞘を幹細胞移植により供給し、修復する方法などが報告されているが、劇的な治療効果は得られておらず、最近ではそれらの方法を組み合わせた治療法が模索されている。
【文責】登坂紀一朗(薬剤師)