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2019/01/04 金曜日 | 予防・未病,学会・研究,生活習慣

【食事療法】の見直しへ、日本糖尿病学会が動き出す

食の欧米化や糖質制限の流行、高齢者の低栄養が問題となる昨今、日本人の食事療法の見直しが迫られている。日本糖尿病学会主催の「食事療法に関するシンポジウム」が5年ぶりに開催された。

☆BMI 22を基準としたエネルギー設定は現実的ではない

宇都宮一典氏(食事療法に関する委員会委員長)は、「これまで、標準体重を基に一律に総エネルギー摂取量を設定してきたが、エネルギー必要量には個人差が著しく、個々のさまざまなデータ(脂質、血圧など)の改善度を評価し、順守性もみながら設定すべき」と、改めて強調した。

☆今を生きる糖尿病患者のエネルギー必要量は?

勝川史憲氏(慶應義塾大学スポーツ医学研究センター)は糖尿病患者の体重当たりの総エネルギー必要量について、海外を含む4つの文献データを基に、総エネルギー消費量とBMIをプロットしたところ、「糖尿病患者のエネルギー必要量は健康な人と差がない、もしくは5~6%程度高め」という結果となった。これを踏まえ、現在の過少なエネルギー処方が、減量の不良や高齢者の虚弱に繋がることを指摘した。

☆少なくともタンパク質1日1g/kg体重で糖尿病患者のフレイル・サルコペニアを予防

荒木厚氏(東京都健康長寿医療センター/日本老年医学会)は、高齢者糖尿病の食事療法の目的は、過剰摂取だけではなく、合併症予防やQOLの維持・向上、そして、これからは老年症候群と言われる認知症やサルコペニア、フレイルなどの予防が重要となる。荒木氏は「ビタミンD低下はサルコペニア、ビタミンB2やカロチン摂取低下は認知機能低下、タンパク質摂取低下は筋肉量および下肢機能低下などのフレイルに関連する」と述べ、「タンパク質1.0g~1.5g/kg体重の摂取がサルコペニアの予防に大切である」と解説した。

このほか、ロイシンを考慮した食事療法も推奨した。

綿田裕孝氏(「食品交換表」編集委員会委員長)が「食品交換表が食事の実態や指導したい内容と乖離している点が問題である一方、写真が多い表は好まれて使用されているので、これらの結果を踏まえて検討していきたい」と締めくくった。

【文責】登坂紀一朗(薬剤師)

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