肺癌などとは異なり、進行大腸癌に対する免役チェックポイント阻害薬(ICI)の効果は限定的である。
現在、効果が認められているのは、マイクロサテライト不安定性陽性(MSI-H)またはミスマッチ修復機構欠損(deficient mismatch repair:dMMR)の進行大腸癌だけだ。10 月にドイツ・ミュンヘンで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2018)では、MSI-H/dMMR の大腸癌に対する発表が相次ぎ、今後の大腸癌分野におけるICI 応用の展望が開けてきた。また、FOLFOXIRI レジメンの可能性をさらに示したTRIBE2 試験の結果も報告された。
その 1 つは、MSI-H または dMMR の進行大腸癌患者に対し、抗 PD-1 抗体ニボルマブと低用量の抗CTLA-4 抗体イピリムマブの併用療法を評価している第 II 相の CheckMate 142 試験。今回は 1 次治療として評価していたコホートから、良好なデータが報告された。MSI-H または dMMR の進行大腸癌は、抗PD-1 抗体が効果を発揮する癌として知られている。しかし、現在、海外で承認、日本で申請中なのは 2 次治療としての利用。現在、ペムブロリズマブ単剤を 1 次治療として評価する第 III 相試験が進行中であり、今回の併用療法の評価にはこのIII 相試験の結果を待つ必要がある。
もう 1 つは、早期大腸癌で、術前療法としての検討が行われたこと。dMMR の患者、ならびに MMR の欠損がなく DNA ミスマッチ修復良好(proficient mismatch repair:pMMR)の患者を対象として、イピリムマブ+ニボルマブを評価した NICHE 試験。dMMR の患者で高い効果が示された一方、pMMR の患者には効果がないことも明確に示された。pMMR の患者の治療は残された課題となっている。
さらに、進行大腸癌患者を対象に、FOLFOXIRI+ベバシズマブによる導入療法と再導入を評価したイタリアの GONO(Gruppo Oncologico del Nord Ovest)らによるTRIBE2 試験でも、有望な結果が報告された。
【文責】登坂紀一朗(薬剤師)