人工透析に至らない時期の慢性腎臓病(CKD)患者で、太っている人の方が緊急入院したときの院内死亡率が低いとする研究結果を、東京医科歯科大・茨城県腎臓疾患地域医療学寄付講座の頼建光教授(腎臓内科)、同大腎臓内科で大学院生の菊池寛昭さんらが米科学誌に発表した。
人工透析になった腎臓病患者では体格とその後の経過で同様の傾向が研究で明らかになり、「肥満パラドックス」と呼ばれていたが、透析導入前の患者においては、これまで体重と死亡率の関係について統一した見解は得られていなかった。
2013~15年度の3年間に、全国1700以上の病院が提供した診療記録のデータを活用。CKDと診断された後、何らかの理由で緊急入院し、入院時の体格指数(BMI)が分かっている患者約2万6千人を選び、BMIの大小と入院時の感染症の有無で8グループに分けて100日後までの院内死亡率を比較した。
その結果、感染症の有無には関わらず、死亡率は痩せているほど高く、太っているほど低くなっていた。感染症がなくBMIが25前後の人と比べて、最も痩せているグループは院内死亡リスクが1.82倍になっていたという。ただし、糖尿病を合併したBMI27以上の人の場合は、太っていても死亡率は低くならなかった。
頼さんは「腎臓病になっても十分なカロリーを取って体重を維持し、痩せないことの重要性を示す結果だ」と話している。米科学誌は「PLOS ONE」
【文責】登坂紀一朗(薬剤師)