2022年7月28日 読売新聞オンライン
特別養護老人ホーム(特養)などの介護施設・事業所から報告された死亡事故について、政令市や県庁所在地など全国106自治体の約6割が、件数や原因を公表していないことが読売新聞のアンケート調査で分かった。2021年度に106自治体だけで計1159人が事故で死亡していた。
調査は6~7月、政令市と中核市、県庁所在地、東京23区の計109市区にアンケート形式で実施し、介護事故の統計に関する公表の有無、事業者から報告を受けた昨年度の事故による死者数などを尋ねた。106自治体から回答があった。
死者数などについて、市のホームページや広報紙で公表しているのは20市区(19%)。21市区(20%)は再発防止に役立てるため、事業者を集めて指導する際に示していた。65市区(61%)は公表していなかったが、横浜市は「再発防止に重要な情報のため、今後は公表していきたい」(高齢施設課)としている。
介護保険法に基づく運営基準では、施設や事業所から市区町村への事故報告を義務付けている。一方で自治体には事故件数などの公表義務はなく、国も事故の全国集計は行っていない。
しかし、全国的な傾向の把握は、効果的な事故防止対策の策定に役立つため、87市区(82%)が「国による取りまとめが必要」との考えを示していた。
21年度に介護事故で死亡した1159人の原因の内訳は、食事介助中に食べ物が気管に入る誤嚥(ごえん)が679人(59%)と最多で、転倒・転落が159人(14%)だった。
事故の起きる背景(複数回答)では、79市区(75%)が、介護現場の「人手不足」を挙げた。職員が業務に追われ、注意の行き届かないことが事故の発生につながる実情が浮かび上がった。