週刊ポスト2022年10月28日号
https://news.yahoo.co.jp/articles/0875cf207a0b8f0949e6ba76b55593707eb9daff?page=2
患者の命と健康を守る医師にあってはならないはずの不祥事が、今年に入り相次いでいる。茨城県は今月4日、宿直勤務中に飲酒した県立病院の30代男性医師について、「戒告」とする懲戒処分を発表した。
男性医師は宿直中の夕方6時から深夜12時頃にかけてビール3リットルを飲み、未明に病棟に呼び出された時はその状態で患者に点滴針を挿入していた。飲酒に気付いた看護師は男性医師に口止めされたが、上司に報告して発覚したという。
「呼び出しないと思い」県立病院医師、宿直勤務中に飲酒…未明に入院患者に点滴
同8日には、福岡県で乗用車を運転中の20代男性医師がパトロール中の警察に飲酒検知を求められたが拒否。その後、飲食店のトイレに立てこもった末に、警察官を突き飛ばし公務執行妨害で逮捕された。
自称医師、飲酒検知求められトイレにこもった末に…警官突き飛ばし逮捕
さらには、こんな事件も起きた。同6日、静岡県警焼津署に傷害と公務執行妨害の疑いで逮捕されたのは、焼津市立病院に勤める20代の男性研修医だった。研修医は8月、市内での飲み会後にケガをした友人の救急搬送を巡り、消防隊員らとトラブルになった。
その際、研修医が消防士3人を殴るなどし、50代の消防司令に肋骨の骨折、30代消防士に顎の骨の骨折などの大ケガを負わせたという。研修医は9月下旬から「停職1か月」の懲戒処分を受けている。
この数年は新型コロナ対応で医療の最前線で働く人々の奮闘が話題になることが多かったが、一部の医師の不祥事はその信頼を揺るがしかねない。全国の医療現場で何が起きているのか。都内総合病院に勤務する50代の男性外科医が明かす。 「昨今はコンプライアンス(法令遵守)が徹底されて厳しくなっているが、自分が若い頃は飲酒に寛容というか、そんな雰囲気があった。もちろん当番中は論外ですが、休日に担当患者が急変して呼び出された時に、多少飲んでいても病院に向かうことはありました。私が執刀医で手術を担当する際、急遽呼び出されたサポートの医師がほろ酔いだったこともあります」
もとより、24時間365日稼働し、救患や重い症状の患者を受け入れることの多い総合病院での勤務は過酷を極める。日頃のストレスや重圧を、飲酒や羽目を外して遊ぶことで紛らわそうとする医師は少なくないという。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師はこう指摘する。 「茨城での宿直中のビール飲酒の件は、3リットルという量から考えて、日常的に飲んでいたことが推測されます。ただ、患者に不利益が生じていないので本来なら公表すらされないケース。どういう理由で表沙汰になったのかわからないが、医師の世界はトラブルに“寛容”な面がある。 焼津の暴行事件は研修医がすでに停職1か月の処分を受けていますが、逮捕されたことで、停職期間の延長や研修のやり直しが課されるかもしれません。いずれにしても、医師免許剥奪には至らないでしょう」
刑事事件を起こした医師・歯科医師は、裁判での有罪判決後、半年に1度開催される厚労省の「医道審議会」で処遇が決まる。今年7月の審議会で行政処分が下された17人のうち、免許取消は「放火」の1人のみ。「住居侵入・準強制わいせつ」の1人は医業停止3年の処分だった。
不祥事を起こしても、よほどの重罪でなければ、再び医師として医療現場に戻るルートがあるのが実情だ。ここまで挙げたのは極端な例だが、気を付けたいのは不祥事を起こした医師ばかりではない。前出・上医師が言う。 「往々にして医師は特権意識が強く、なかには自分が偉いと勘違いしている人もいます。医師不足の地域の若い勤務医ほど、態度が横柄な人が目立つ印象です。そもそも、相手を不快にさせるような医師が、患者さんの気持ちに添う適切な対応ができるとは思えません」
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