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2023/08/24 木曜日 | プロジェクト

医薬品販売制度検討会 :デジタル技術を取り入れた新たな医薬品販売制度の方向性確認 とりまとめに向けた検討調整へ

2023年8月24日

・医薬品の販売制度検討会は4日に開いた第7回会合でとりまとめに向けた検討に入る。
・医薬品の販売区分・販売方法の見直しと、デジタル技術による遠隔管理販売の検討に関する方向性を確認した。
・やむを得ない場合による例外の明確化・法制化で普遍的な零売の規制に踏み出す。
・一方、要指導薬に関しては1類薬に移行しない区分創設を通じ、品目特性に応じてオンライン服薬指導を導入するとともに、実現を前提とした遠隔管理販売の実証事業に着手する見通しとなり、一定の規制改革を認める形でデジタル技術の進歩を勘案した新たな制度確立が目指される。

・これまでの議論を踏まえて厚生労働省は、処方箋薬以外の医療用薬販売では『医療用薬は医師の診断等に基づき使用されるもので、患者の需要に基づいて日常的に販売されるべきものではない』こと、要指導薬においては『品目の特性に応じて一般薬に移行しない区分を創設する』、『オンライン服薬指導は品目の特性に応じて可否を考慮する』ことで検討会のコンセンサスが得られたとし、いわゆる零売薬局規制とオンライン服薬指導による要指導薬販売を進める方針が固められた。

・医療用薬は『法令上、例外的に「やむを得ない場合」に薬局での販売を認める』ものとしている。
・想定される具体的な事例の検討を経て、災害時など以外の正当な理由として①医師に処方され服用している医療用薬が不測の事態で手元にない状況となり、かつ診療を受けられない場合②一般薬で代用できない、代用可能と考えられる一般薬が容易に入手できない場合――と定義。
・販売は原則かかりつけ薬局として厳格な可否判断を求め、販売記録や医療機関への報告などを要件に設定する方針で、制度としては存続させながらも、処方箋薬・非処方箋薬という分類を廃止することで、薬局による医療用薬販売の例外性がより強められることになる。

・この要件について認定NPO法人ささえあい医療人権センターCOML理事長・山口育子委員は、一般的に薬局の零売が知られていない現状から、「旨く使おうとすれば、よほどかかりつけでしっかりした関係・情報共有ができていることが前提。改めて薬局のあり方が問われることになる」と強調。
・一方、実質的にかかりつけ薬局に限定した運用に対しては、「かかりつけの定義が難しい。判断できない要件なら今までと変わらない」とした渥美坂井法律事務所・落合孝文委員ほか、状況的にかかりつけ薬局へのアクセスが困難な場合も踏まえ、次回会合以降かかりつけの概念を整理する可能性も示唆された。

・要指導薬の品目特性では、スイッチが見込まれる緊急避妊薬を例にOTC薬に移行しない区分候補・オンライン対応の可否を考慮する流れを定め、個別の品目判断についてはスイッチ化スキームほかの検討会・審議会で議論することとしている。
・濫用のおそれのある医薬品に関しては、『特定販売の際にはオンライン服薬指導(画像・音声を用いたリアルタイムの双方向通信)を用いた販売方法とする』など顔の見える関係での対応と、身分証による本人・年齢確認を導入する方向でコンセンサスが得られているが、複数の委員から「ネット販売自体を禁止すべき」と強い規制を求める意見も出されている。

・また、第5回会合で販売時の濫用防止以前に小包装化などメーカー段階での取組みの必要性が指摘されたことを受け、日本OTC医薬品協会事業活動戦略会議座長・山本雅俊委員が業界として小包装化の検討に乗り出す方針を示す。
・一方、「4月から指定されたかぜ薬については濫用実態を詳細に調査して対策を考える必要がある」と、市場の規模と実態を踏まえた慎重な検討を要望。
・日本チェーンドラッグストア協会理事・関口周吉委員、和歌山県立医科大学客員教授・赤池昭紀委員も、通常需要やセルフメディケーション(セルメ)への影響の考慮を求めた。

・販売区分・販売方法をめぐっては、『情報提供義務がないことで2・3類薬販売に専門家が関与していない実態がある』との厳しい指摘が寄せられている。
・日本薬剤師会副会長・森昌平委員は、「仮にそういうことがあるなら法令違反」と一蹴。実態を踏まえて現状のリスク区分を簡素化すべきとの意見に対し、「(区分が)多いから面倒ということではなく、何のためにそうした分類があり、ルールが決まっているのかということを総合的に考え、どう分類するかを検討すべき」とした。

・努力義務に対して2・3類薬販売の中心を担う立場となる全日本登録販売者協会会長・杉本雄一委員は、「3類薬の購入希望であっても、この場合は受診してもらうべきというケースはある。
・専門家でありながら『3類薬だから何もしなくても良い』との安直な行動になっているとすれば大きな問題で、より丁寧な説明が求められる」と釘を刺したほか、ネットワーク医療と人権理事・花井十伍委員は「努力義務は全く無意味で機能しないのは明らか」と痛烈に指摘。
・適正使用や濫用防止の観点からも、セルメ領域で登録販売者の有効活用を強化し、専門家への相談を経てOTC薬を購入する習慣を促す環境整備の観点が制度見直しに重要と訴えた。

・デジタル技術を活用した店舗販売業のあり方については、前回までの会合で専門家による遠隔管理のもと、別店舗での医薬品の提供・受渡を可能とするデジタル技術活用の条件候補は概ね整理された。
・大きな焦点である責任所在に関して厚労省は、『管理店舗の有資格者が販売判断することから一義的な責任は管理店舗が負うのではないか』との考え方において、『基本的に管理店舗が販売することを前提に検討を進める』方針を提示。
・受渡店舗には医薬品を適切に保管管理できるシステムの構築・維持・運用ほか、管理店舗が確認した手順書に基づく業務管理に責任を負う方向で調整するとした。

・加えて①濫用リスク薬など医薬品特性に応じた販売方法が規定され、その要件が遵守されるのであれば不適切な区分・品目は特段ない②責任範囲の明確化を前提として管理店舗と受渡店舗は同一法人に限る必要はない③遠隔管理の距離は薬事監視の観点から当面の間は同一都道府県内④専門家の対応能力や購入者の状況を踏まえ、複数管理可能な受渡店舗数を検討する――といった判断を行うことを主な論点に、実証事業を通じて厚労省が作成した業務フローの技術的詳細の検討に着手する方針が示された。

・検討会は責任所在をはじめ、デジタル技術活用による遠隔管理販売の実現を目指すこと自体については了承する形となったものの、③④をめぐっては委員間で意見がわかれている。

・日薬・森委員は確実に過誤が防止できるデジタル技術活用が前提の議論であることを念押しした上で、「責任が明確化していれば良いというわけではなく、違う法人で人の管理ができるのかということは慎重に考えるべき」と同一法人に限定した運用を主張。緊急時対応や医薬品の補充などの点からも距離制限は必要としたほか、管理店舗数について「個人の能力にもよるが、1人が複数の店舗を管理できるのか。また突発的トラブルが同時多発的に起きた場合に対応できるかどうか」と問題提起した。

・規制改革推進側の立場となる渥美坂井法律事務所の落合孝文委員は、様々な業界で法的責任に基づく業務契約が行われる実態から同一法人に限らない運用案に賛同し、「店舗数などは現時点で仮説であり、実証のなかで確かめていくことが重要。
・確かに同一都道府県内のほうが薬事監視しやすいことはわかるが、地方における人口減少や、同じ経済圏でも事情が異なることもある実態を踏まえ、必ずしも同一圏内に限るものではない形でできるようにしていただきたい」と訴えた。

・日本保険薬局協会常務理事・松野英子委員は、そもそも距離に関わらないことがデジタル技術活用の利点にあげながらも、「この業務フローがどこまで生活者に求められているのかは未だに疑問。当初目的は人口減少問題だったが、そうした観点でみれば実証実験はへき地のような部分から始めて(遠隔管理販売の可能性や是非を)評価すべき」と提案するとともに、目的が充分定まらないまま制度化されると利便性の追求のみがクローズアップされるとし、「『家に居て薬が買えるなら楽だ』といった方向に走られると、安全担保の点では非常に懸念されることになる。目的がどこにあるのか、というところを見ながら実証実験を行って欲しい」と要望した。

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