2024年6月1日
・福島医大付属病院移植医療部は、1日に「移植医療支援室」を開設した。この室は福島県内の医療機関に対して、脳死判定や臓器摘出時に医師、看護師、検査技師などを派遣する支援体制を構築する役割を果たす。遠隔医療支援システムの活用も検討されており、脳死者が発生した場合の対応を明確にすることで、県内の脳死移植体制を強化する。
・県内には脳死下の臓器提供が可能な「5類型施設」が10施設以上存在するが、そのうち脳死下の臓器提供の経験があるのは医大付属病院、竹田綜合病院(会津若松市)、いわき市立総合磐城共立病院(現いわき市医療センター)の3施設のみ。体制が整っていない施設では、患者や家族の意思にもかかわらず臓器提供を断念せざるを得ないケースが発生することがある。支援室の開設により、これらの施設との連携を強化し、脳死者の発生頻度や課題を把握することが目指されている。
・支援室は約40人の医師、看護師、検査技師からなり、脳神経外科や肝胆膵・移植外科、小児外科などの専門家が所属している。遠隔医療支援システムを活用して映像や音声を共有し、脳死判定や臓器摘出の際の支援を行う。また、県の臓器移植推進財団で長年活動してきた「移植コーディネーター」も支援室で兼務している。
・近年、脳死下の臓器提供数は国内で増加しているが、人口100万人あたりの臓器提供数を比較すると、米国は日本の67倍、韓国は13.8倍と差が大きい。福島県は都道府県別でも常に下位に位置しており、臓器提供が行われたのは過去5例(公表分)のみ。医大付属病院は体制拡充を目指し、支援室を設置した。田中秀明部長(57)は「脳死下での臓器提供が終末期医療の大切な選択肢であり、提供された臓器が多くの命を救うことができるということを、もっと多くの人に知ってもらう必要がある」と述べている。
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