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2023/12/19 火曜日 | 事件

学会の指針逸脱、高額治療 発達障害外来のクリニック 頭部磁気刺激、専門医批判

学会の指針逸脱、高額治療 発達障害外来のクリニック 頭部磁気刺激、専門医批判
2023年12月16日

・ 発達障害の専門外来をうたい、東京や大阪などで展開する精神科クリニックが、日本精神神経学会が認めていない独自の見解を基に「効果が高い」と宣伝し、頭部を磁気で刺激する治療に誘導していることが16日、クリニック関係者や元患者らへの取材で分かった。患者側が治療費のために高額のローンを組むケースもあり、専門医から「不安を利用している」との批判が出ている。

・ この治療法は「経頭蓋磁気刺激治療(TMS)」と呼ばれる。日本精神神経学会の指針や専門家は、うつ病には一定の効果があるが、発達障害に有効との科学的根拠は乏しく、治療に用いるべきではないとしている。

・ クリニックは発達障害に有効だと宣伝し、カウンセリングや診察で「9割に効果がある根本治療で、効果は持続する」と強調。学会が指針で避けるよう求めている未成年にも勧めている。

・ 元患者らによると、初診の脳波検査で「脳に混線がある」「発達障害のグレーゾーン」などと説明。治療費を一括で支払えない場合はローンを組ませるなどし、8~48回の施術(費用は最大で計約85万円)を契約させるケースが多い。クリニック関係者は「精神科の専門医はほぼいない。TMSの十分な研修も受けていない」と指摘する。

・ 治療効果が得られないとして、このクリニックの患者がセカンドオピニオンを求めて受診に来ると複数の精神科医が証言している。

・ 2022年春に小学生の息子のため計約60万円の治療を契約した千葉県の30代女性によると、TMSを数回受けた後、治療方針に不安を感じて中断。クリニックから未施術分の返金を受けた。

・ 運営する医療法人は美容外科大手と関連するコンサルタント会社に業務委託している。同社幹部は取材に「自由意思で納得して契約してもらっており、問題ない。本当に効果がないなら事業として成り立たないはずだ」と話した。共同通信はクリニック側の見解を問うため医療法人などに質問状を送付したが、16日までに回答はなかった。

・ ※経頭蓋磁気刺激治療(TMS)

専用のコイルを頭部に当て、発生するパルス磁場によって特定部位の神経細胞を繰り返し刺激し、脳の働きを正常へと近づける治療法。うつ症状への効果が一定程度認められ、日本では2019年に一部のうつ病患者に保険適用された。身体への有害性や負担が少ない新しい治療法として注目されるが、日本精神神経学会の適正使用指針は、18歳以上で、かつ薬物療法により十分な改善がみられないうつ病患者に対象を限定。海外では強迫性障害やニコチン依存症などを治療対象にしている国もある。

・ ※発達障害

生まれつき脳内の情報処理や制御機能が偏っていることによる(1)対人コミュニケーションなどが難しい自閉スペクトラム症(ASD)(2)物事に集中しづらく落ち着きがない注意欠陥多動性障害(ADHD)(3)読み書きが困難な学習障害(LD)を指す。厚生労働省の2016年の調査

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