日本の子どものう蝕(虫歯)は年々減少傾向にありますが、それでもなお他の疾患と比較しても高い罹患率を示しています。成人では約3人に1人が未処置のう蝕を持ち、高齢者ではう蝕経験者が増加しています。このような背景から、う蝕予防の重要性がますます高まっています。
フッ化物応用の歴史と安全性
フッ化物応用は75年以上の歴史があり、その安全性と有効性は繰り返し確認されています。特にフッ化物配合歯磨剤は、日本で広く普及しており、う蝕予防において重要な役割を果たしています。
4学会合同の推奨される利用方法
日本口腔衛生学会、日本小児歯科学会、日本歯科保存学会、日本老年歯科医学会の4学会が合同で、フッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法をまとめました。以下はその概要です:
年齢別の使用量とフッ化物濃度
- 歯が生えてから2歳まで: 米粒程度(1~2mm)、フッ化物濃度1000ppmF(日本の製品を踏まえ900~1000ppmF)
- 就寝前を含めて1日2回の歯みがきを行う。
- 歯磨剤をごく少量使用し、歯みがきの後にティッシュなどで軽く拭き取る。
- 歯磨剤は子どもの手が届かない所に保管する。
- 3~5歳: グリーンピース程度(5mm)、フッ化物濃度1000ppmF(日本の製品を踏まえ900~1000ppmF)
- 就寝前を含めて1日2回の歯みがきを行う。
- 歯みがきの後は、歯磨剤を軽くはき出す。うがいをする場合は少量の水で1回のみとする。
- 6歳~成人・高齢者: 歯ブラシ全体(1.5cm〜2cm)、フッ化物濃度1500ppmF(日本の製品を踏まえ1400~1500ppmF)
- 就寝前を含めて1日2回の歯みがきを行う。
- 歯みがきの後は、歯磨剤を軽くはき出す。うがいをする場合は少量の水で1回のみとする。
高濃度フッ化物配合歯磨剤の必要性
特に高齢者やう蝕リスクが高い成人には、5000ppmFの高濃度フッ化物配合歯磨剤が有用であることが知られています。日本ではまだ市販されていませんが、その認可が望まれています。
フッ化物配合歯磨剤の選び方
フッ化物配合歯磨剤を選ぶ際には、いくつかのポイントを考慮すると良いです。以下にそのポイントをまとめました:
1. フッ化物濃度
- 子ども用: 6歳未満の子どもには、フッ化物濃度が1000ppm以下のものを選びましょう。例えば、3~5歳の子どもには900~1000ppmFの歯磨剤が適しています。
- 大人用: 成人や高齢者には、1400~1500ppmFの高濃度フッ化物配合歯磨剤が効果的です。
2. 研磨剤の有無
- 低研磨または無研磨: 歯の表面を傷つけないように、低研磨性または研磨剤が含まれていないものを選びましょう。特に知覚過敏の方には、研磨剤が少ないジェルタイプが適しています。
3. 発泡性
- 低発泡: 泡立ちが少ない歯磨剤は、しっかりと磨けているかどうかを確認しやすく、歯磨きの時間を延ばす助けになります。
4. 使用感
- ジェルタイプ ・ペーストタイプ: ジェルタイプは柔らかく、歯と歯の間に行き渡りやすいです。ペーストタイプは研磨剤が含まれていることが多く、歯の着色汚れが気になる方に適しています。
5. 特定のニーズに応じた選択
- 知覚過敏: 知覚過敏の方には、知覚過敏用のフッ化物配合歯磨剤を選びましょう。これらの製品は、歯の表面を保護し、痛みを軽減する成分が含まれています。
- 高齢者: 高齢者には、根面う蝕予防のために高濃度フッ化物配合歯磨剤が推奨されます。
まとめ
フッ化物配合歯磨剤の適切な利用は、う蝕予防において非常に重要です。年齢やリスクに応じた使用方法を守り、定期的な歯科検診を受けることで、健康な歯を維持することができます。歯磨剤のフッ化物濃度や使用方法についての最新情報を常にチェックし、適切なケアを心がけましょう。