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市販薬のオーバードーズ問題とドラッグストアの反発理由

市販薬のオーバードーズ(過剰摂取)が若年層を中心に社会問題化しています。この問題に対応するため、厚生労働省は薬機法改正を目指し、医薬品販売制度の見直しを進めています。しかし、ドラッグストア業界やネット事業者からは反発があり、その理由は多岐にわたります。

ドラッグストア業界の反対理由

6月6日に開催された厚生科学審議会「医薬品医療機器制度部会」に出席した日本チェーンドラッグストア協会理事の森氏は、ドラッグストア業界の意見が反映されていないと訴えました。彼は、「検討会とりまとめで提言されている購入者情報の記録・保管や空箱陳列は実行不可能」と述べました。

ドラッグストア業界が反発する具体的な理由には以下の点が挙げられます:

  1. 総合感冒薬の販売における「手の届かない場所の陳列」
  2. 購入者情報の記録・保管

カウンター奥への陳列やシールドに鍵をかけることが求められていますが、ドラッグストア業界はこれを実行するスペースがないと主張しています。また、鍵を開ける作業によるトラブルや、購入者が商品を直接手に取れないことへの懸念もあります。さらに、購入者情報の記録・保管については、サイバー攻撃のリスクが高まることが問題視されています。

規制の必要性と反対意見

一方、規制強化の必要性についても多くの議論があります。ドラッグストア業界は「OD(オーバードーズ)で何人が死んでいるのか」と問いかけ、適正使用している多くの人々の利便性が損なわれることを懸念しています。しかし、若年層における市販薬のオーバードーズによる死亡事例が報告されており、問題の深刻さが浮き彫りになっています。

国立精神・神経医療研究センターの嶋根卓也氏の調査では、高校生の約60人に1人が過去1年以内に市販薬を乱用目的で使用していたことが明らかになっています。また、15歳から64歳までの一般住民5000人を調査した結果、約65万人が過去1年以内に市販薬を乱用したと推定されています。

ドラッグストアの対応と実効性のある施策

ドラッグストア業界も、市販薬の乱用防止に向けて努力をしています。日本チェーンドラッグストア協会は、資格者が常駐し、購入状況を見ながら声かけを行うことを提案しています。この取り組みは、薬剤師や登録販売者が乱用のリスクが高い患者に対して適切な支援を提供するためのゲートキーパーとしての役割を果たすことを目指しています。

実効性のある施策としては、店頭での声かけが有効とされています。嶋根氏も「薬剤師や登録販売者による声かけ」が大量購入の抑制力になる可能性があると指摘しています。

また、アメリカでの事例を参考に、医薬品の陳列方法や啓発文言の記載、保護者に対する教育などの施策が効果的であると考えられています。これらの施策を組み合わせることで、市販薬の乱用防止に向けた総合的なアプローチが求められています。

まとめ

市販薬のオーバードーズ問題に対する規制強化は、ドラッグストア業界やネット事業者にとって多くの課題を抱えています。しかし、若年層を中心とした市販薬の乱用問題の深刻さを考えると、何らかの対策が必要であることは明らかです。ドラッグストア業界も社会的責任を果たすために、専門家の関与や声かけの強化などの対策を進めています。規制強化と利便性のバランスを取りながら、実効性のある施策を導入していくことが求められています。