7月 2024

誤嚥性肺炎とは

誤嚥性肺炎とは、食べ物や唾液が気道に入って肺に雑菌が侵入して炎症が生じる病気です。高齢者に多く見られ、初期症状が風邪と似ているため早期発見と治療が重要です。主な症状には発熱、咳、痰、体のだるさがあります。寝たきりの人などでは症状がはっきりしないこともあります。以下に誤嚥性肺炎の特徴を詳しく説明します。

  1. 発症メカニズム:
    • 誤嚥性肺炎は、食事中の誤嚥(飲食物や唾液、胃液が気管に入ること)によって生じます。
    • 喉の奥は気管と食道に分かれており、誤って肺に物質が入ることで炎症が生じます。
  2. 高齢者に多い:
    • 高齢者や脳梗塞の後に起こりやすい病気です。
    • 初期症状が風邪と似ているため、早い段階で医療機関を受診することが重要です。
  3. 主な症状:
    • 咳、たん、発熱、呼吸困難、意識もうろうなどが見られます。
    • 寝たきりの人などでは症状がはっきりしないこともあります。
  4. 診断と治療:
    • 胸部レントゲンやCT検査、血液検査、細菌検査を用いて診断されます。
    • 治療には抗菌薬が使用されますが、重症の場合は酸素吸入や人工呼吸器が必要になることもあります。

誤嚥性肺炎が心配な方は、一般内科や呼吸器内科、感染症内科などを受診してください。

高齢者だけではない、誤嚥性肺炎

高齢者以外でも誤嚥性肺炎のリスクは存在します。以下に、誤嚥性肺炎のリスク要因をいくつかご紹介します。

  1. 神経筋障害:
    • 神経筋障害(脳卒中、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症など)を持つ人は、嚥下機能が低下しやすいため、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。
  2. 認知症:
    • 認知症患者は、食事の嚥下が適切でないことがあり、誤嚥性肺炎のリスクが増加します。
  3. 嚥下機能の低下:
    • 嚥下機能が低下する要因として、加齢、口腔内の問題(歯の欠損、入れ歯の不適切な装着)、食道の疾患などがあります。
  4. 免疫機能の低下:
    • 免疫機能が低下している人は、感染症に対するリスクが高まります。誤嚥性肺炎もその一つです。

予防のためには、適切な食事摂取、嚥下リハビリ、口腔ケア、免疫力の維持などが重要です。

診断、検査方法

  • 胸部レントゲン(X線写真)検査:肺の炎症の有無や程度を調べる。
  • 胸部CT検査:肺の炎症の有無や程度、正確な部位を調べる。
  • 血液検査:炎症の程度や全身の状態を調べる。
  • 細菌検査:痰や血液中の菌を検出して適切な抗菌薬を選択する。

誤嚥性肺炎の予防ポイント

  1. 食事の工夫:
    • 温かい食事を温めた状態で摂ることで、誤嚥を防ぎましょう。
    • 刺激的な調味料(カプサイシンやメントール)を使うことも有効です。
    • 黒胡椒のにおいを嗅ぐことで嚥下反射が促進されます。
  2. 姿勢の注意:
    • 食事の際には上体を少し後傾させて顎を引く「うなずき嚥下」を心掛けましょう。
    • 食後は座位を保ち、食後1時間半は横にならないようにしましょう。
  3. 摂食嚥下リハビリテーション:
    • 嚥下機能を回復させるための訓練が重要です。
    • 間接訓練(食事を使わない訓練)や直接訓練(食事を使った訓練)を行います。
  4. 口腔ケアと予防接種:
    • 歯磨きやうがい、入れ歯の手入れをしっかり行いましょう。
    • インフルエンザや肺炎球菌ワクチンを接種することも予防に役立ちます。

まとめ

誤嚥性肺炎は高齢者に多く見られ、早期発見と適切な治療が重要です。予防対策を意識し、適切な医療機関を受診することで、健康な生活を維持しましょう。


歯周病と全身疾患:口の健康が身体全体に及ぼす影響

今回は、歯周病がどのように全身の健康に影響を及ぼすのかについてお話しします。歯周病は一見口腔内の問題に思えるかもしれませんが、実際にはさまざまな全身疾患との関連性が指摘されています。 歯周病は、歯肉の炎症や歯槽骨の破壊を引き起こす疾患です。口腔内に存在する細菌が炎症を引き起こし、歯周組織を傷つけます。この炎症が放置されると、細菌は血流やリンパ液を通じて全身に広がることがあります。それでは、詳しく見ていきましょう。

歯周病菌は全身をめぐる

  1. 歯周病菌が血液を介して全身に広がる: 歯周病が進行すると歯ぐきや歯を支える骨などの歯周組織を破壊し、歯周病菌が血管へと侵入して脳や心臓など全身に広がります。歯周病菌が侵入した血管内で、慢性的に過剰な生体防御反応が起こり、血管や体の機能に悪影響を及ぼすことがあります。
  1. 症性物質が全身に広がる: 歯周病によって作られた炎症性物質が血液を介して全身に広がります。この炎症性物質は、血糖値を下げるインスリンの働きを悪くさせたり、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めたりする原因となります。

影響を及ぼす主な疾患の関連性

  1. 心臓病との関連性: 歯周病の細菌が血流を介して心臓に到達すると、心内膜炎や心内膜症を引き起こす可能性があります。心臓弁の損傷は、心拍数の増加や息切れの原因となることがあります。
  2. 糖尿病との関連性: 歯周病の炎症は、血糖値の管理を難しくすることがあります。さらに、糖尿病患者は免疫力が低下しているため、歯周病にかかるリスクが高まります。歯周病と糖尿病は、互いを悪化させる悪循環に陥ることがあります。
  3. 妊娠中の影響: 歯周病の炎症によって産婦人科領域での合併症の発生率が上昇し、早産や低出生体重児のリスクが高まることがあります。歯周病は妊娠中の女性にとっても重要です。
  4. 誤嚥性肺炎への影響:誤嚥性肺炎のリスク: 歯周病原菌が誤嚥により気管支から肺にたどり着くことで、高齢者の死亡原因でもある誤嚥性肺炎の原因となります。
  5. その他の全身疾患: 歯周病は脳卒中、呼吸器疾患、関節リウマチなどとも関連しています。これらの疾患は、歯周病における炎症や細菌が引き起こす慢性的な状態と関連していることが研究で示されています。

まとめ

したがって、歯周病は単なる口腔内の問題ではなく、全身の健康に対して深刻な影響を及ぼす可能性があることを忘れてはいけません。歯周病の予防・治療を行うことで、全身の様々な病気のリスクを下げることが可能です。日々の歯磨き・口腔ケアを見直し、全身の健康につなげましょう。