福岡県では、人工呼吸器など日常的に医療的な介助が必要な「医療的ケア児・者」に関する避難支援が重要な課題となっています。2024年6月17日の県議会で服部誠太郎知事は、県内の医療的ケア児・者の約2割が災害時に自力で避難できない可能性があることを報告しました。この記事では、医療的ケア児・者の避難支援の現状、電源確保の課題、および福岡県の取り組みについて詳しく解説します。
医療的ケア児・者の現状と避難支援の課題
福岡県が2022年度に実施した調査によると、県内には271人の医療的ケア児・者がいます。このうち、「移動時の支援者を確保できている」と答えたのは205人(76%)で、残りの66人(24%)は避難所への自力避難が難しいとされています。主な理由として、介助者が車を運転できない場合や、車の運転とケアの両方を一人の介助者が対応しなければならない状況が挙げられます。
このような状況に対し、適切な避難支援が求められますが、現実的には介助者の確保や移動手段の確保が課題となっています。特に、災害時における迅速な避難が求められるため、日常的な支援体制の強化が必要です。
電源確保の重要性と課題
医療的ケア児・者にとって、人工呼吸器などの医療機器の電源確保は生命に直結する重要な問題です。調査では、人工呼吸器の外部バッテリーや自家発電装置を所持していると答えたのは210人(77%)でした。しかし、自家発電装置は約15万円と高額であり、現時点で県の補助制度がないため、購入が難しい家庭も多いです。
災害時には停電が発生することがあり、電源の確保が喫緊の課題となっています。特に、2023年7月の九州北部大雨では一部地域で停電が発生し、医療的ケア児・者の円滑な避難が大きな課題となりました。
福岡県の取り組み
福岡県では、医療的ケア児・者が災害時に適切に避難できるよう、様々な取り組みを進めています。服部知事は、2023年2月に立ち上げた県運営の「医療的ケア児等支援情報サイト」に災害の手引きを掲載し、医療機器の電源確保については県医療機器協会を通じて医療機器販売業者に予備バッテリーの貸し出しなどの協力を依頼しています。
また、避難支援についても、新政会の中村香月議員の一般質問に答える形で、支援者の確保や避難手段の整備を強化する方針を示しました。これにより、災害時の迅速な対応が期待されます。
まとめ
福岡県における医療的ケア児・者の避難支援と電源確保は、命に直結する重要な課題です。現状では約2割の医療的ケア児・者が自力で避難できない可能性があり、介助者の確保や移動手段の整備が求められています。また、災害時の電源確保についても、自家発電装置の高額な費用が課題となっています。
福岡県は、情報サイトの立ち上げや予備バッテリーの貸し出しなどの取り組みを進めていますが、さらなる支援の強化が必要です。医療的ケア児・者が安心して生活できる環境を整えるために、行政と地域社会が一丸となって取り組むことが求められます。