医師のキャリアにおいて、開業医と勤務医の選択は大きな岐路です。本記事では、医師の収入とキャリアパスを比較し、転職を考える医師に向けた洞察を提供します。開業医の可能性とリスク、勤務医としての安定性を探ります。
私大医学部を出たら開業を志す?
私立大学の医学部を卒業した後、多くの卒業生が直面するのは、高額な学費の返済です。国公立大学と比較して、私立大学の医学部は学費が高額であるため、卒業後に経済的な自立を目指す動機が強くなります。このため、開業医になることは、高い収入を得る可能性があるため、魅力的な選択肢となります。
私立大学の医学部は、研究よりも臨床医に重点を置いており、卒業生の多くが臨床医や開業医を目指す傾向にあります。開業医になることで、自分のクリニックを持ち、より大きな経済的自由を享受することができますが、それには大きな初期投資と、ビジネスとして成功させるためのリスクが伴います。
実際に開業する医師の多くは、まずは大きな病院で経験を積み、資金を貯めた後、10年以上の経験を経てから独立するケースが一般的です。開業初期は患者数の増加やクリニックの知名度を高めるための努力が必要となりますが、成功すれば、自分の時間を自由に使いながら、専門性を活かした医療を提供することが可能になります。
したがって、私立大学の医学部を卒業した後に開業医を目指すかどうかは、個々の医師の経済的な目標、キャリアの志向、そしてリスクへの耐性に大きく依存します。開業医として成功するためには、医療だけでなく、経営に関する知識やスキルも非常に重要です。
1日100人以上の患者を診る医師も
開業医の中には、1日に100人以上の患者を診ることで知られる医師もいます。これは、非常に効率的な診療体制と患者管理が必要とされることを意味します。しかし、このような高い患者数を扱うことは、医師の体力的な負担が大きくなるだけでなく、患者の待ち時間の増加やスタッフの残業時間の増加など、経営面においても支障をきたす可能性があります。
一般的に、外来診療において1診で1日80〜120名の患者を診ると、医師の体力的な限界に近づき、患者の満足度や診療の質に影響を与える可能性があります。そのため、診療体制の見直しや効率化、採用の強化、2診体制への移行、場合によっては医院の増築や移転など、さまざまな対策が必要になります。
また、開業医が1日に100人以上の患者を診ることは、勤務医と比較しても非常に多い数字です。勤務医は通常、多くても1日40人程度の患者を診ることが多いため、開業医の方が患者数が多い傾向にあります。開業医は自身のクリニックを運営するため、診療の効率化だけでなく、経営戦略も重要な要素となります。
このように、1日に100人以上の患者を診る医師は、医療サービスの提供だけでなく、クリニックの経営という側面でも高い能力が求められることがわかります。医師自身の健康管理やワークライフバランスの維持、スタッフのマネジメント、患者満足度の維持など、多方面での配慮が必要です。開業医として成功するためには、医療の専門知識だけでなく、経営に関する知識やスキルも非常に重要となるのです。
開業医の収入と「フリーランス医師」
開業医としての収入は、個々のクリニックの規模、立地、専門分野、そして患者数によって大きく異なります。一般的に、開業医は勤務医に比べて高い収入を得る可能性がありますが、それは同時に高い経営リスクを伴います。厚生労働省のデータによると、病院勤務医の平均年収は約1479万円であるのに対し、法人の開業医は平均で2530万円、個人の開業医は2458万円となっています。
一方で、「フリーランス医師」という働き方も注目されています。フリーランス医師は、特定の医療機関に属さず、複数のクリニックや病院で働くことができます。これにより、柔軟な勤務スケジュールを持ち、プライベートの時間を重視することが可能です。フリーランス医師の年収は、働き方や契約内容によって大きく変わりますが、時給1万円で週5日、1日8時間働いた場合の想定年収は約1920万円となります。
フリーランス医師のメリットとしては、自分の専門性を活かした仕事を選ぶ自由度が高く、仕事量を調整することで収入を増やすことも可能です。しかし、福利厚生が充実していない場合が多く、社会保険に自分で加入する必要があり、賞与や退職金などの恩恵を受けにくいというデメリットもあります。
開業医とフリーランス医師の選択は、医師のキャリアプラン、ライフスタイル、収入への期待値、そしてリスクへの耐性によって異なります。どちらの道を選ぶにしても、医療の専門知識に加えて、経営やキャリア形成に関する知識が重要となります。医師としてのキャリアを考える上で、これらの情報が参考になれば幸いです。
まとめ
開業医と勤務医の選択は、医師のキャリアにおいて重要な決断です。開業医は、自分のクリニックを持つことで高い収入を得る可能性がありますが、それには経営のリスクと大きな責任が伴います。一方、勤務医は安定した収入と労働条件を享受できますが、収入の上限や自由度には制限があります。
開業医は、自らの診療方針を決定し、クリニックの運営において大きな裁量を持つことができます。しかし、集患や経営の成功は自己責任であり、そのための努力と戦略が必要です。勤務医は、病院や診療所での安定した勤務環境の中で、専門性を深めることができますが、経営に関する心配はありません。
医師が開業医か勤務医かを選ぶ際には、自身のライフスタイル、キャリアの目標、収入への期待値、リスクへの耐性を考慮する必要があります。どちらの道を選ぶにしても、医療の専門知識に加えて、経営やキャリア形成に関する知識が重要となります。医師としてのキャリアを考える上で、これらの情報が参考になれば幸いです。