新型コロナウイルス感染症の大流行は、日本の医療体制の様々な問題を浮き彫りにしました。医療機関の分担、開業医の在り方、かかりつけ医の位置付けなど、多くの課題が明らかになりました。この記事では、特に「医師の偏在」と「医療費増大」という2つの主要な問題に焦点を当て、その解決策を探ります。
医師の偏在とその影響
地域格差と医療提供の現状
医師の地域格差は深刻な問題です。例えば、人口10万人当たりの医師数を比較すると、札幌市では約350人、名古屋市では約330人ですが、福島県いわき市では約140人、愛知県豊田市では約139人と、大きな差があります。また、県単位でも徳島県は約340人ですが、埼玉県は約180人と格差が見られます。これは、大学の医局に入る医師が少なくなり、地方の病院に派遣できなくなったことが一因です。
総合診療かかりつけ医の不足
地域医療を支える総合診療かかりつけ医の不足も問題です。特に高齢者が増加する中で、訪問診療の需要が高まっています。総合診療かかりつけ医は、地域の第一線で医療を提供し、患者の総合的な健康管理を行う役割を果たします。これにより、複数の専門医を受診する必要が減り、医療費の削減にも寄与します。
女性医師と働きやすい環境の整備
増加している女性医師にとっても、総合診療クリニックでの勤務は働きやすい環境を提供します。医師の数だけを増やすのではなく、労働負担の大きな状況を改善し、さまざまな偏在を解消することが重要です。
医療費の増大とその対策
高度医療機器の普及と受診の重複
医療技術の進歩により、CT検査やMRI検査などの高度な医療機器が普及し、高齢者が複数の医療機関を受診するケースが増えています。これにより、初診料・再診料、検査費用が重複し、医療費が年々増加しています。現在、国民医療費は年間で45兆円を超え、65歳以上の高齢者は1人あたり年間35万円を医療費に使っています。
受診の重複削減と医療費の削減
受診の重複を減らすためには、総合診療かかりつけ医を増やし、高齢者がまずそこで受診するようにすることが効果的です。例えば、頭痛を訴える高齢者が総合診療かかりつけ医を受診すれば、総合的な診察で原因を特定し、1回の受診で済ませることができます。これにより、初診料・再診料、検査費用の重複を避け、医療費の削減が期待できます。
具体的な事例
例えば、80代の男性が頭痛で内科を受診し、降圧薬を処方された後、さらに脳神経外科や整形外科を受診しても異常がないと診断されるケースでは、初診料・再診料、処方箋料、検査費用が複数回かかります。これを総合診療かかりつけ医で一回の診察で済ませることで、医療費の大幅な削減が可能です。
まとめ
日本の医療体制の改善には、医師の偏在と医療費の増大という2つの大きな課題に取り組む必要があります。総合診療かかりつけ医を増やし、地域医療を強化することが重要です。また、受診の重複を減らし、医療費を削減するためには、総合診療かかりつけ医の役割がますます重要になります。これらの対策を講じることで、国民皆保険制度を維持しつつ、国民誰しもが平等で高度な医療を受けられる社会を実現できるでしょう。