近年、宇宙開発が進む中で、日本からも革新的な技術が次々と生まれています。これらの技術は宇宙だけでなく、地球上でも大きな影響を与えています。本記事では、宇宙仕様の医療機器と食の技術について、3つの先端事例を紹介します。
小型人工呼吸器「MicroVent V3」
まず注目すべきは、神戸大学の石北直之准教授が開発した小型人工呼吸器「MicroVent V3」です。この手のひらサイズのデバイスは、宇宙での製造と動作実験を経て量産化され、災害時や救命活動での使用が期待されています。
石北准教授は、2010年にけいれん発作を起こした患者の迅速な治療を目的に、簡易吸入麻酔器「嗅ぎ注射器」を考案。さらに、空気圧駆動の人工呼吸器の開発を進め、NASAとの共同プロジェクトで国際宇宙ステーション(ISS)上での3Dプリンターを用いた製造実験に成功しました。
コロナ禍を経て、経済産業省の支援も受け、石北准教授の研究はさらに進展。2021年8月には薬事承認を取得し、2025年4月の上市を目指して準備が進められています。
重力制御装置「Gravite」
次に紹介するのは、広島大学発のスタートアップ、スペース・バイオ・ラボラトリーズが開発した「Gravite」です。この装置は、国際宇宙ステーションと同じ微小重力環境や過重力環境を人工的に作り出すことができ、医療や創薬、生物学の研究に利用されています。
「Gravite」は、物体を複雑に回転させることで様々な重力環境を再現でき、NASAや国内外の研究機関で広く使用されています。CEOの弓削類氏は、「宇宙再生医療」の研究に20年以上取り組み、無重力空間を活用した再生医療の技術開発を進めています。
弓削氏は、再生医療とロボティクスを組み合わせた最先端リハビリテーションセンターの構築を目指しており、宇宙での研究成果を地球上での医療に応用することに情熱を注いでいます。
進化形「3Dフードプリンター」
最後に紹介するのは、山形大学の古川英光教授が開発する「3Dフードプリンター」です。この技術は、液体と固体の中間の物質である「ゲル」を利用して、食品を3Dプリントするものです。
山形大学 ウェブマガジン ひととひと
研究する人#20 川上勝「3Dプリンタで介護食革命 食べるを楽しく介護を楽に」
古川教授の3Dフードプリンターには、ペースト状の素材を積み上げるスクリュー式と、粉末状の食品を溶かした液体にレーザーを当てて固めるレーザー式があります。これにより、見た目も味も本来の食材に近い食品を作ることが可能となり、介護食や病院食としての利用も検討されています。
2023年には、フードテック企業「レーザークック」が設立され、宇宙での活用を視野に入れた3Dフードプリンターの実用化が進められています。宇宙での生活を豊かにするだけでなく、地球上での食の問題解決にも寄与することが期待されています。
まとめ
宇宙技術が私たちの生活を変えつつある現代、日本発の技術が大きな役割を果たしています。小型人工呼吸器「MicroVent V3」、重力制御装置「Gravite」、そして3Dフードプリンター「LASERCOOK」の3つの先端技術は、宇宙と地球の両方での医療と食の未来を切り開いています。これらの技術が普及することで、私たちの生活はさらに便利で豊かになるでしょう。