医師不足の現状とその背景
埼玉県秩父市や小鹿野町を含む秩父医療圏では、夜間や休日に救急患者を受け入れる「2次救急輪番制」が運用されています。しかし、医師不足が深刻化し、この制度の維持が難しくなっています。特に秩父病院は「医師確保が困難」として輪番制からの離脱を検討しており、現場からは悲鳴が上がっています。
過去には7病院で構成されていたこの輪番制も、現在では秩父市立病院、皆野病院、秩父病院の3病院のみで実施されています。外科系の医師確保が特に難しく、各病院は限られたリソースで救急医療を提供しています。秩父病院では非常勤医の出勤日数が半減し、現場を退いていた医師が復帰して宿直に入るなどの対応が行われていますが、限界が近づいているのが現状です。
行政の取り組みと限界
秩父保健所は初期救急医療体制の充実を図るため、地元医師会による休日診療所の開設や在宅当番医制の導入を進めています。また、県の奨学金貸与制度を活用し、へき地診療所や公立病院での勤務が義務づけられている自治医大出身の医師を優先的に配置するなど、医師確保に努めています。
しかし、この制度は公立病院に限定されており、民間病院には適用されません。さらに、順天堂大学付属病院からの医師派遣も民間病院は対象外であり、民間医療機関への支援が乏しいことが問題となっています。秩父消防本部によると、救急出動件数は増加の一途をたどり、輪番制の維持ができなければ、患者は秩父市外の病院に搬送されることになります。
地域医療の将来と対策
秩父地域の救急医療体制を維持するためには、複数の病院が輪番制に参加することが不可欠です。秩父保健所は、「地域医療の体制確保のためには輪番制の維持が重要」とし、病院間での協力を求めています。しかし、現在の状況ではそれだけでは不十分です。地域医療の未来を守るためには、行政と医療機関、地域住民が一体となって医師確保や制度改革に取り組む必要があります。
民間病院への支援を強化し、医師の働きやすい環境を整えることが急務です。また、医療教育の充実と地域医療への従事を促進する施策も必要です。地域医療を支えるための包括的なアプローチが求められています。
まとめ
秩父医療圏の2次救急輪番制は、医師不足という深刻な問題に直面しています。地域医療を守るためには、行政の支援強化、医療機関間の協力、そして地域住民の理解と協力が必要です。今後の取り組み次第で、秩父地域の医療体制の未来が左右されることでしょう。