歯科治療は私たちの生活に欠かせないものであり、一度失った歯は自力で再生することができないため、定期的なケアや治療が重要です。しかし、近年、一部の歯科医による杜撰な治療や不必要な治療が横行しているという報告が増えています。この記事では、歯科治療におけるモラルハザードの実態について深掘りし、患者として知っておくべきポイントを解説します。
不必要な治療の横行
一部の歯科医院では、患者に不必要な治療を行うケースが報告されています。例えば、痛みもないのに虫歯があると診断され、高額な治療を勧められることがあります。また、インプラント治療が必要と診断された患者が別の医師に相談すると、実際には抜歯の必要がない状態だったという事例もあります。これらの不必要な治療の背景には、歯科医院の売上ノルマが影響している可能性があります。
売上ノルマの設定
多くの歯科医院では、スタッフに対して売上ノルマが設定されており、これが不必要な治療の一因となっています。ある歯科医院では、スタッフの売上グラフが掲示され、競争を煽る環境が作られています。このような環境では、患者の健康よりも売上を優先する風潮が生まれやすくなります。
虫歯の激減と歯科医院の経営危機
近年、若者の虫歯の割合が大幅に減少しています。30年前、15〜19歳の若者の約95%が虫歯を持っていましたが、現在ではその割合が45%にまで減少しています。この変化により、虫歯治療に依存していた歯科医院の経営が厳しくなっています。結果として、一部の歯科医院では、自費診療を導入しなければ経営が成り立たなくなっている状況です。
保険診療と自費診療のバランス
日本の歯科保険診療は、手軽に治療を受けられる点で優れていますが、その反面、必要な治療が適切に評価されない問題があります。特に、歯周病治療においては、保険診療がカバーしきれない部分があり、患者は長期的に通院することが求められます。このようなシステムは、治療をすればするほど儲かる「出来高制」が悪用されやすい構造を持っています。
実際に起きている問題
ある歯科医院では、定期検診とクリーニングに通っていた患者が、実際には広範囲の歯肉炎症を放置されていたケースが報告されています。また、歯周ポケットの深さを測る検査が必要な歯周病診断において、検査をせずに数字を記入している歯科医院も存在するとのことです。これらの事例は、患者の健康よりも経営を優先する歯科医院の問題を浮き彫りにしています。
専門家の見解
予防歯科の専門家である米畑有理氏は、日本の保険診療に疑問を抱き、自費専門の予防歯科医院を経営しています。彼は、必要な治療が評価されない日本の保険診療の問題点を指摘し、長期的な通院が経営的に有利になる仕組みがあると述べています。このようなシステムの改善が求められる中で、患者自身が適切な治療を受けるための知識を持つことが重要です。
まとめ
歯科治療におけるモラルハザードの問題は、患者の健康を守るために深刻な課題です。売上ノルマや経営の厳しさが一因となり、不必要な治療が横行する現状があります。患者としては、複数の医師の意見を聞くことや、信頼できる歯科医を見つける努力が必要です。また、歯科業界全体としても、患者の利益を最優先に考えるシステムの改善が求められます。歯科治療は一生ものですから、適切なケアと治療を受けるために、しっかりと情報を収集し、判断することが重要です。