訪問看護は、医療従事者が患者の自宅を訪問し、医療サービスを提供する重要な役割を果たしています。しかし、最近の報道によると、精神科訪問看護の分野で診療報酬の減算を逃れるために、患者の状態を悪く記載するよう指示が出されていたとの疑惑が浮上しています。この記事では、この問題の背景、具体的な事例、そしてその影響について詳しく解説します。
背景:診療報酬改定と新しい仕組み
厚生労働省は診療報酬改定で、精神科の訪問看護において重度の患者数が少ない場合に報酬を減算する仕組みを導入しました。この新しいルールでは、各訪問看護ステーションの患者のうち、精神疾患の状態を示す「GAF(Global Assessment of Functioning)」という数値が40点以下の患者が月に5人以上いない場合、そのステーションの診療報酬が減算されます。GAFの数値は看護師が付けるもので、低いほど患者の状態が悪いことを示します。
問題発覚:数値の改ざん指示
今回の問題が発覚したのは、精神科訪問看護の大手である「ファーストナース」(東京)の内部で、GAFの数値を意図的に引き下げるよう指示が出されていたことです。社員の証言や内部資料、社内のLINEメッセージが入手され、数値を悪く記載することで報酬の減算を逃れる目的であったことが明らかになりました。
具体的には、一部の訪問看護ステーションでGAFの数値が一斉に大幅に引き下げられる事態が発生しました。これにより、本来であれば減算対象となるはずのステーションが減算を免れ、不正に高い報酬を得ていた可能性があります。
影響と今後の展望
この問題は、訪問看護の質に対する信頼を大きく損なうものです。診療報酬は公的資金から支払われるため、こうした不正行為は医療資源の不正利用につながります。また、患者の状態を正確に記録しないことで、適切な治療や看護が行われないリスクも生じます。
ファーストナースは一律に数値を引き下げる指示を否定していますが、厚生労働省は今回の問題を重く見て調査を進めています。不正が確認された場合、厳しい処分が下されることは避けられないでしょう。
まとめ
訪問看護の診療報酬減算逃れ問題は、医療業界全体に大きな衝撃を与えました。適切な診療報酬制度の運用と、患者に対する正確な評価が求められます。医療従事者としては、患者の利益を第一に考え、誠実な業務遂行が求められることを再認識する必要があります。