患者が廊下で治療を受ける現状とその背景:英国医療崩壊の実態
英国の病院で、入院待ちの患者が廊下や駐車場、さらには備品置き場で治療を受ける光景が常態化しています。この状況は現場の医療従事者たちからも強い警鐘が鳴らされており、国家的な危機として認識されています。
廊下治療の現状と影響
英国の看護師たちの労働組合である王立看護協会(RCN)の調査によれば、調査対象の看護師の3人に1人以上が、最近の勤務中に患者が不適切な場所でケアを受ける現場を目撃したと回答しています。緊急救命室(ER)の過密状態が過去2年間以上続いており、その結果、廊下や駐車場といった設備の整っていない場所での治療が増えています。
約1万1000人の看護師の半数以上が、廊下治療では必要な救命機器が使用できないと答えています。また、約67%の看護師が、廊下治療ではプライバシーや尊厳が保てないと感じています。これに対し、RCNのニコラ・レンジャー書記長代行兼会長は「これはわたしたちの職業にとって悲劇です」と述べ、この状況が国家的な緊急事態であることを強調しました。
廊下治療が常態化した背景
廊下治療が常態化した背景には、病院および地域医療のリソースが限界を超えていることがあります。英国の医療システムは、人口の高齢化に伴う患者の増加に対応できておらず、ソーシャルケア施設のベッド数や在宅ケアワーカーの不足が深刻な問題となっています。これにより、病院からの退院が遅れ、結果的に利用可能なベッド数が減少することで、ER部門の過密状態がさらに悪化しています。
また、救急車で搬送される患者の受け入れが困難になることで、救急車の対応能力も低下します。2023年は、この救急医療の遅れによって1万4000人が死亡したと推定されており、これは救急医療の遅延が患者の臨床成果を悪化させている証拠です。
政府への要求と今後の課題
来月には英国で総選挙が実施され、新たな政権が選ばれる予定です。医療団体は次期政権に対し、救急医療危機を最優先課題とするよう強く訴えています。RCNは廊下治療問題の追跡調査と理解の深まり、説明責任の強化を政府に要望しています。また、NHSプロバイダーズのサフロン・コーデリー副会長も、第一線の医療従事者たちが直面している現状を改善するために、より戦略的な投資と計画が必要であると強調しています。
まとめ
英国の医療システムは現在、深刻な危機に直面しています。患者が廊下で治療を受けるという異常事態は、病院と地域医療のリソース不足が主な原因です。医療従事者たちからは、この状況を改善するための緊急の対応が求められています。次期政権には、医療システム全体への投資と計画的な改革が期待されています。医療従事者たちの声に耳を傾け、持続可能な医療環境を築くことが急務です。